MRSA感染について

予防

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予防

A.サ−ベイランス機能の強化
     「 院内感染防止全般についての基本事項」に準じて行う、す
    なわちサ−ベイランス機能の強化(臨床症状によるサ−ベイラン
    ス、検査室の分離菌サ−ベイランス、臨時の特別疫学調査、例え
    ば、疑わしい抗生物質による難治性患者の検索)及びそのサ−ベ
    イランス結果に基づく対策の確立が必要である。この際重要なこ
    とは、発生を把握するとともに、発生原因の解明であり、その中
    でも抗生物質の投与状況と菌の薬剤耐性状況の検討がまず上げら
    れる、次いで、患者の病態及び同室者の状況を把握する必要があ
    る。これらについては、院内感染対策委員会が中心となって行う。

B.抗生物質の適正使用
   1.正しい起因微生物の同定
     MRSAの選択を予防するためには、抗生物質の適正な資本が
    基本である、MRSA分離症例での前投与抗生物質は、通常の黄
    色ブドウ球菌の分離症例の場合に比較して、第三世代セフェム、
    特に黄色ブドウ球菌に抗菌力の弱い第三世代セフェムが多く、ペ
    ニシリン第一.二世代セフェムは少なかった、今日のMRSAの
    耐性結果からにて、アミノ配糖体剤の使用も影響があった可能性
    がある。
     したがってMRSAの選択を防ぐためには、正しい起因微生物
    を同定することが最も大切で、それに基づいて適切な抗生物質を
    使用しなければならない。

   2.使用薬剤の量と使用日数
     抗生物質を使用する場合には、起因微生物が同定された場合で
    も、未定の場合でも、同定起因微生物又は推定起因微生物を考慮
    しながら1回使用量と1日使用量、使日数を必要最小限にとどめ
    ることが重要である。
     使用日数を必要最小限にするため、患者の免疫能が正常な場合
     には、解熱、白血球数正常化、CRPの陰性化等が重要な指標
    となる。

   3.臨床観察
     免疫不全患者や局所感染防御能の低下患者にあっては、特に抗
    生物質の選び方に注意し、MRSAの選択を予防するとともに、
    MRSAの選択がしょうじた場合にも、速やかに把握でくるよう
    厳格な臨床観察を行い、検査態勢を整えておく必要がある。

   4.外科領域における投薬
     外科手術の場合によく行われる感染予防のための投薬が、MR
    SAの選択の重要な要因の1つとされている、この現象の防止の
    ためには、無菌手術、準無菌手術、汚染手術の3郡に分けて、各
    病院のこれまでの術後感染症の起因微生物を考慮して、投与抗生
    物質を定め、かつ投与期間を臨床像と検査所見にも基づいて定め
    るべきであり、漫然とした抗生物質の投与や規格化した投与は絶
    対避けなければならない、この場合も手術患者の免疫不全の有無
    に投与期間は影響されるが、厳格な臨床観察と検査所見の追跡に
    より適正な投与期間が定められよう。

   5.正しい抗生物質の選択
     適正な抗生物質選択のためには、各病院ですでに集積されてい
    る感染症や術後感染症に対する選択、使用方法の知見をもとに、
    患者の感染防御能も加味して行うべきであり、そのために最新の
    成績(頻度の高い分離菌とその感受性等)をいつも用意しておく必
    要がある。
     また、抗生物質選択にあたって、有効であるからといって一剤
    に集中すべきではない、その弊害として、最近ニュ−キノロン系
    抗菌剤やミノサイクリンに対する耐性菌の増加が報告されている。


C.MRSAの伝播阻止対策
     病院でMRSAの伝播阻止対策を立てる場合、その病院の疫学
    的特徴、すなわち「MRSAの分離頻度はどうか」「MRSA分離
    株のたい耐性はどの程度か」が問題となる、これらの特徴を踏ま
    えて各病院に最も適した対策を実施すべきであり、ここでは基本
    的な伝播阻止対策について解説する。

 1.保菌者対策
   a.易感染性患者でない患者が保菌者の場合
     保菌者について、易感染性患者でなければ神経質になる必要は
    ない、当該保菌者のベッドは、易感染性患者と極力離れた位置に
    配置するとともに、医療従事者は患者と接触する前後に、手洗い、
    手指消毒を行う、患者に対し「MRSAとは何か」「保菌状態とは
    どのような状態なのか」を説明し、同意を求めたうえだ、易感染
    性患者との接触を避けることや手洗いの励行を促す。

   b.易感染性患者が保菌者の場合
     上記aと同様であるが、易感染性患者では深部感染を引き起こ
    す可能性もあり、以下の処置を行って除菌を試みる、除菌の判定
    は、一定のものがないが、処置の中止後1〜2週間の間に3回以
    上、MRSAの培養が陰性となった時点で、除菌されたとするこ
    とが判定にあたっての指標の1つとして考えられる。

   【保菌部位別処置】
     鼻腔:ヨ−ド過敏症がなければ、ポビドンヨ−ドを鼻腔前庭に
    1日2回塗布し、ポビドンヨ−ドによるうがいを1日3回実施す
    る。
     因頭:ポビドンヨ−ドによるうがいを1日3回実施する。
     皮膚:
    ア 手術用又はポビドンヨ−ドや消毒用エタノ−ル等で、洗浄や
      清式を行う。
    イ 有髪部は、ポビドンヨ−ドにて洗浄する。

     尿路:膀胱留置カテ−テルを抜去して、間欠的導尿に切り替え
    ることで有用になることがある。

   c.医療従事者が保菌者の場合
     鼻腔内にMRSAを有している保菌者の鼻腔からMRSAが直
    接飛沫感染を起こす危険性は、まずないと考えられる、しかし保
    菌状態にある鼻腔に触れたものは確実に汚染されるため、鼻腔に
    わずかでも触れたものは確実に消毒又は破棄しなければならない。
     以上より、鼻腔内MRSA保菌状態にある医療従事者の勤務に
    際しては、以下の事項に注意する。
     患者に接するまえには、必ず手洗い、手指消毒を行う。
     マスクの着用は、手指が鼻腔に触れることを防止するうえで意
    味がある。
     鼻腔に触れるタオル等は個人専用とし、共有しない。
     手指が鼻腔および鼻周囲にふれた場合は、必ず手洗い、手指消
    毒を行う。
     易感染性患者との接触は極力避ける。

 2.発症患者対策
     表層感染患者については、一般的に前述の保菌者と同様に扱う、
    又深部感染患者や褥瘡の患者については、菌排出の量が多く周囲
    を汚染する危険が大きいことから、前述の保菌部位別処置や後述
    する治療に加えて隔離を必要とする場合がある。

   【隔  離】
     感染力を有する患者等を一定の場所に他の患者から隔離するこ
    とで、感染力を有する患者から他人への感染を防止する目的で行
    う感染源隔離と、感染に対する易感染性患者を感染から守る目的
    で行われる防御(予防)隔離あるいは逆隔離とがある。
     MRSA発症患者が発生した場合には、これからの感染源隔離
    と逆隔離の組合せを患者の状態や病棟の運営状況をみて臨機応変
    に行う必要がある、この際患者の人権と精神的ストレスには十分
              −19−   

    配慮しなければならない。

  a.隔離の場所(設備)
     可能な限り、個室に隔離する。
     個室隔離が不可能な場合は、大部屋に複数の発症患者を収容し
    て隔離することも止むお得ない
     易感染性患者がいる病棟には隔離しないのが望ましいが、出来
    ない場合は、易感染性患者とはなるべく離れた個室や大部屋に収
    容する。

  b.隔離解除の判定基準
    一定の判定基準はないが、治療の中止後1〜2週間の間に3回以
   上MRSAの培養が陰性となった時点が隔離解除の1つの基準とし
   て考えられる、隔離解除も追跡検査が必要である。

  c.患者、家族への説明と同意
    担当医、MRSA感染の特殊性、隔離の必要性、隔離中の注意事
    項等を患者や家族に十分に説明し、理解と同意を得なければなら
    ない。

  d.患者移送(移動)
     ストレッチャ−や車椅子は、清潔なシ−ツでカバ−ガする。 
     移送終了時は、着用していたガウン、帽子、マスク手袋等を処
    分又は滅菌消毒し、手洗い、手指消毒、ポビドンヨ−ドにてうが
    いを行う。
     検査及び処置に使用した部屋及び処置器具を消毒する。

  e.隔離病室のセッティング
     手指及び処置器具の消毒薬を準備する。
     バイタルサインのチェックやガウンテクニックに必要な物品は、
    すべて隔離病室専用として準備する。
     その他、個々の患者の病状により必要な物品すべてを隔離病室
    専用として準備する(青で色分けしてある。)不必要な物品は持ち
    込まない。

  f.入退室時及び病室内での注意事項
     入室時にはガウンテクニックを行い、スリッパをはき替えマス
    クをして手指の消毒をする。
     室内では、手指やガウン等が必要以上に患者や器具等に触れな
    に注意し、必要に応じて手袋を用意する。
     診察処置後手袋、マスクを室内のゴミ箱に捨てる。
     退室後はガウン、スリッパをホルマリンボックスに入れ(ポビ
    ドンヨ−ドにてうがいを行うことが望ましい。)
     採痰等の検体を入れた容器は、外部を消毒してから持ち出す。

  g.当該患者の回診は、最後に行う。
   【転院時と退院時の注意事項】
     MRSA患者が転院する際や退院したのち、他の医療機関に入
    院する場合には、担当医は相手の病院にMRSA患者であること
    を連絡する。
     患者や家族には、退院後の注意事項について説明する。

 3.患者家族の協力
     MRSAの院内感染を防止するためには、患者家族の協力も重
    要な要素であり、保菌者や発症患者の家族には十分な説明を行い
    理解を求め、家族が保菌者となりMRSA伝播の原因とならない
    ように、下記のような協力を要請する。
     隔離患者の病室入出時にはスリッパをはき替え手指消毒を行う
     帰宅時にうがい、手洗いを励行する。

 4.MRSAによる汚染物への対策
   【院内環境】
    整頓、清掃、汚染物処理等の基本的な対策を行うほか、特に病室
   に患者の身の周り品を不必要に持ち込むことは、微生物汚染の原因
   となるので避けるべきである。
  【病室の消毒】
   MRSA発症患者の使用した病室は、以下の方法で消毒を行う。
     消毒薬だの清掃(塗布):消毒薬としては、エタノ−ルを用いる、
    清掃(デゴ51)にあたっては、上記の消毒薬をモップや雑巾に浸
    して、拭布に十分に吸着させ、清式する。
   
   【MRSA汚染されたリネン類、寝具類の消毒】
     リネン類:布団、マットレスのように丸洗いできない物は、汚
    染部位を消毒用エタノ−ルで拭き取り、乾燥させる。
     衣類は必要に応じてテゴ51消毒薬につけて洗濯し乾燥する。
    枕カバ−、シ−ツ類、病衣は特別袋に入れ、MRSAと明記して
    洗濯業者に出す。

   【器具、器械】
    器具、器械の清潔を保つように心がけ、可能な限り感染者専用あ
   りはディスポザブルとする、器具の取扱には十分注意し、破損や汚
   染により、取扱者自身や後処理の担当者に汚染や刺傷が起こらない
   ように注意する。

  a.滅 菌
     汚染器具をテゴ51容器に入れ、オ−トクレ−プ(132℃)又は
    エチレンオキサイドガス(50〜60℃)で滅菌する、滅菌ができい場
    合はホルマリンボックスにいれる。
     なお、手術器具、器械等の観血的器具は、洗浄後滅菌して再使
    用する。

  b.消 毒
     浸漬できない器具、器械ストレッチャ−、ベッド、手術台等は
    ゴム手袋を着用し、雑巾に消毒液を含ませ軽くしぼって物体表面
    を拭き取る。ベッド枠やベッド用ビニ−ル等、患者の体の直接触
    れる部分は、消毒用エタニ−ルで清式する。
     カテ−テル、チュ−ブ蛇管等、内腔を有する器具や、内視鏡等
    の管状の器械、透折装置、麻酔装置、レスピレ−タ−等の回路部
    分は灌流法により消毒する。その際に消毒対象物の内腔に空気が
    残らないよう内腔に薬液が充満した状態を保ちながら、薬液を灌
    流させる。

 5.手洗い
    MRSA対策として特別の手洗い方法はなく、一般的な手洗いで
   十分である。
    なお、医療従事者は、病院に出勤して診療を始める前や診療が終
    わって、医師控室、自室等に戻る時、更に食事の前後そして病院
    を出る前の手洗い励行に留意する必要がある。
   【一般的な手洗いの方法】
     石鹸を用い、流水で20秒以上の手洗いが基本であり、可能で
    あれば温水が供給できて、給水栓がペダルまたは肘レバ−式の手
    洗い方式が望ましい。
     ベイスンによる手洗いは避けるべきである、流水による手洗い
    が不可能な場合は、アルコ−ル綿による手指消毒、又は手指が清
    潔であれば、ウエルパスの皮膚消毒薬を手指にするこむ。


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