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4.臨床像 A.MRSAの保菌者 MRSA感染者の臨床像を考える時、MRSAの保菌者及び発症 患者について十分理解をしておくことが大切である。 一般に保菌者とは、感染して菌又はウイルスの増殖が起こってお り感染源となりうるが、その菌による感染症の特徴とする臨床症状 を呈していないものをいう。例えば、コレラ、A型肝炎、B型肝炎 及びC型肝炎、HIV感染症等の発症例のまわりには、多くの場合、 保菌者(又は不顕性感染)が存在するものである。 MRSAの保菌状態とは、MRSAが鼻くう、咽頭、皮膚、尿路 等に定着、増殖を起こしてはいるが、臨床的に問題となるような感 染症状を起こしていない場合である。 B.発症患者 MRSA感染により、臨床的に問題となるような感染症状を呈し ている患者を発症患者と定義する。 MRSA感染症は、その特有な多剤耐性という以外は、一般の黄 色ブドウ球菌感染症と同様の臨床像を呈すると考えられている。 MRSA感染は、表層感染と深部感染の二つに大別できる。 ア.表層感染 表層感染としては、皮膚の化膿巣、中耳炎等があるが、一般 に対処しやすいこともあり良好な経過をたどるものが多い、し かし、易感染性患者においては、感染は遷延化し、時として深 部感染に移行する場合がある。特に熱傷や褥瘡、手術創感染等 は、局所の感染防御機能が低下しており、注意を要する。 イ.深部感染 MRSA感染にとって、深部感染をどう防止するかが最優先 の課題である。代表的なMRSA感染発症例は次のとおりであ るが、このような例は、MRSA院内感染サ−ベイランスの重 要な対象となる。 ウ.髄膜炎 症状は発熱を伴い、けいれん、嘔吐等のいわゆる髄膜刺激症 状が出現し、予後は不良である。特に注意を要する点は、髄膜 炎では何らかの感染が先行しており、初発症状としては起こら ず、先行する感染を制御できれば、髄膜炎には至らない可能性 があることである。 エ.肺炎 時として肺膿瘍まで進展することがある。早期に治療を開始 すれば、治癒しうる可能性が高い、ただし、肺炎球菌、インフ ルエンザ菌ブランハメラ菌等による肺炎に比較し重症である。 オ.腹膜炎 多くは腹部の手術後に発症する。術後の感染予防、特に術後 の抗生物質の使用に注意を払う必要がある。適切な治療が行わ れないと敗血症に至り、多臓器不全で死亡する場合がある。ま たトキシックショックに陥る場合もある。 カ.腸炎 消化管の手術、特に胃切除後の患者で多く発症する。発熱を 伴うコレラ様の下痢が主症状で、発症は多くの場合、術後3日 以内であるが、早い場合には術後1日目のこともある。その原 因としては、鼻咽こうに常在していたMRSAが、胃酸で殺菌 されず腸管内で増殖したためと考えられている。又、同様の作 用機序により潰瘍治療剤使用中(ガスタ−.タガメット.オメ プラ−ル)にも起こりうる。 キ.敗血症 前述の深部感染の経過中に発症するが、褥瘡、熱傷患者やI VHを施行している患者に発症することもある。多臓器不全か ら死亡に至る危険な病態である。症状は発熱のみのことが多い ので、常に敗血症の可能性に留意しておかなければ見逃すこと もある。特に全身状態の悪い患者では、発熱すらなく意識状態 の変化が初発症状のこともあり、この点にも注意を払う必要が ある。